カーク船長の娯楽日記

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意志決定は誘導される

脳科学とか言われているものには、心理学のようなものや、科学とはいいがたい怪しいものなども含まれており、怪しげな「脳科学者」もかなり多いように思います。もともとまともだった人でも、M木K一郎氏のように脳科学者としてテレビに出て有名になると、脳科学以外の分野ではそこらへんのオッサンと同レベルな知識・見識しか無いことを忘れてしまうのか、ツイッターで愚にも付かないことばかりつぶやいて炎上をくりかえすようになる人もいます。

そんな中、怪しくない脳科学者と言うかまともな脳研究者のコラムを読んでなるほどと思いました。タイトルは以下です。

なぜ能力の低い人ほど自分を「過大評価」するのか

このタイトルを見れば誰しも、自分のまわりに実際にいる「能力が低いのに自分を過大評価している誰か」を思い浮かべると思いますが(笑)、実際はそういう話ではありません。

このコラムで書かれている内容は、要するに、「自分で自分の無能な部分に気づくことはできない(難しい)」と言う意味のことです。そう、ある意味このコラムは、自分自身のことを言っているのかもしれないのです。実際、私もそうでした(汗)。

「自分のダメなところには自分ではなかなか気づけない」と言う、まあ言ってみればあたりまえの話です。これも脳科学と言うより心理学みたい話ですが。

それはさておき、このコラムの後半に書いてある、「どうすれば収入を増やせるか」のところの「おとり効果」の話のほうが私は面白かったです。

カレー屋のメニューが

普通カレー ¥1000

特製カレー ¥1500

の二つだと、¥1000のカレーを注文する人が多かったとしても、選択肢を1つ増やして

普通カレー ¥1000

特製カレー ¥1500

極上カレー ¥3000

とすると、この「3000円のカレー」を注文する人はほとんどいなくても、1500円のカレーを注文する人が激増するらしいです。

もっとすごいのがこちらの例。米マサチューセッツ工科大学のアリエリー博士ら実験です。

経営学専攻の学生に英経済誌『エコノミスト』を定期購読してもらいました。

ウェブのみ購読  $59

冊子&ウェブ購読 $125

という選択肢では、冊子とウェブの同時購入を選んだ学生は32%だったのですが、選択肢を増やし、

ウェブのみ購読  $59

冊子のみ購読   $125

冊子&ウェブ購読 $125

としたら84%の学生が冊子とウェブの同時購入を選びました。冊子の値段を「冊子&ウェブ」と同一に設定することで、見かけ上のお得感を狙っているわけです。

実際、この効果は絶大で、おとり選択肢を一つ増やしただけで、40%以上の収入増となりました。


そう、「人は意志決定を自分で行っていない」と言うか、自分で決めているように思っていても、かなり誘導されていると言うことです。


さらに、以前に聞いた話ですが、これはScienceと言う有名な学術雑誌に載った研究ですが・・・
死後の臓器提供の意志を示した人の割合を欧州11か国で調査した結果、比率が以下の通り両極端になっている理由を調べたものです。

死後の臓器提供の意思を示した人の割合
 オーストリア 99.8%
 ベルギー 98%
 フランス 99.91%
 ハンガリー 99.97%
 ポーランド 99.5%
 ポルトガル 99.64%
 スウェーデン 85.9%
――――――――――――――――
 オランダ 27.5%
 英国 17.17%
 ドイツ 12%
 デンマーク 4.25%

これを見ると、極端に高い国(スウェーデンより上)と低い国(オランダより下)とにはっきり分かれています。これは何故でしょうか!?

文化や国民性の違い?ではドイツ12%とオーストリア99.8%で真逆になるはずがありません。オランダでは元々もっと低かったのが、国中やマスコミが全勢力を上げて運動を展開して提供に同意する人を増やすべく頑張ったにもかかわらず、27.5%止まりでしたが、スウェーデンより上に書いた国ではそれほど努力はしていないのに高い%です。

では一体何の違いでこんなに差が出たのか!?答は意外に簡単なことと言うか単純な、たった1つのことでした。

臓器提供意志表示カードの様式の違いです。

極端に高い国(スウェーデンより上)の臓器提供意志表示カードの形式は「臓器提供の意志がない場合には✓」の形式に、極端に低い国(オランダより下)は「臓器提供の意志がある場合は✓」の形式になっているのです。

つまり、スウェーデンより上の国では、提供したくない人は✓をつけて、未記入の人は提供する意志があるとみなされるから高くなり、オランダより下の国は、✓をつけない限り提供の意志はないとみなされるので低くなるわけです。

こういうのを「オプトイン/オプトアウト」と言うようです。

オプトイン(opt in)とは、参加すると言う意味、明確に同意することです。一方、オプトアウト(opt out)とは、参加をやめること、脱退することです。

これはまあ良いのですが、怖いのは、「オプトアウトをしないかぎり同意をしたものとみなす」のも、オプトアウトに含められてしまっている点です。

臓器提供を拒否しない限り、提供に同意したものとみなす・・・と言うのはかなり乱暴なような気がしますが、スウェーデンより上ではそうしているのです。でも当人はチェックしないと提供の意思表示をしたことのなるのが分かっているわけですから、質問の形式が意思決定を誘導したことになるでしょう。

ちなみに、日本の運転免許証の裏面にも臓器提供の意志表示を記入する欄がありますが、これは面白いことに、

1.心停止と脳死で臓器提供
2.心停止の場合のみ臓器提供
3.臓器提供しない

の3つが書いてあり、希望するものに○をつける形式になっています。記入しない場合は判断保留と言うことになるようですが、実際には日本はオプトイン型なので、提供する意志を示していなければ、提供しないことになります。これは意思表示を誘導しない良心的な形式だと思います。

少し話がそれてきた気がしますが、自分でものごとを判断していると思っても、実際にはかなり誘導されていると言うのは興味深いですね。
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