カーク船長の娯楽日記

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「左右」ではなく「上下」が対立

フランスの大統領選挙が興味深いですね。アメリカの大統領選挙もそうでしたが。

さすがにルペンが勝つことはなさそうですが、マクロンではフランスはダメでしょうね。とうぶんEUのドイツ支配、EU圏内でのドイツ1人勝ちは続きそうです。まあ、仮にルペンになったとしても、混乱するから良くなるとも言えませんが。

イギリスではEU離脱で国民がまっぷたつに割れましたが、フランスも状況は同じようです。親EUの大統領候補と反EUの候補の支持率をあわせると、ほぼ50%対50%です。親EUの候補は、マクロンとフィヨンであわせて50%、反EUは、極右のルペンと極左のメランションの他に泡沫候補数人でこれもあわせて50%です。

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したがって、極右と極左という両極端な候補が「反EU」を主張しているのですが、これらの2人の候補は移民政策以外はかなり近いです。

極右は「国民の権利を守る」、極左は「労働者の権利を守る」と表現は違いますが、内容はほとんど同じ、社会保障を充実させて労働者や零細企業、農民など権利を守る弱者寄りの政治です。極右と言われているのに社会主義っぽいのでわかりにくいですが。

なので、労働者階級ではルペン支持37%、メランション24%、親EUの候補支持はマクロン16%、フィヨン5%です。一般国民もしくは労働者の立場からすると今のEU言いなりのフランスでは自分たちの権利や利益が守られないと感じているわけですし、それは正しいと思います。

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親EUの候補は中道(マクロン)もしくは右派(フィヨン)ですが、支持者は都市部に住んでいるエリート層や比較的裕福な層、グローバル資本の関係者など、経済的にわりと恵まれている人たちです。

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と言うことは、そもそも、ルペンは本当に「極右」なのか!?

エマニュエル・トッドの友人でフランスのことに詳しい学者の堀茂樹氏の分析がまた興味深いので彼のTwitterから引用しておきます。



フランス現地でも一般にルペンの党「国民戦線」は「極右」とされています。ただ、ここまで大きくなった党や、ましてルペン自身を、烙印を押すような意味で「極右」と言えるかどうか疑問です。又、右左の位置づけは座標軸に依ります。ルペンは文化マターではかなり右または極右、経済政策では左派です。


思想から見てマリーヌ・ルペンは日本の政治家の誰に近いか?私なら、ずばり亀井静香さんと答えます。マクロンのほうは思想を持たず、効率追求の名で福祉国家を解体していくイケメン新自由主義者、新しさを装って既成権力を存続させる人という点で、小泉純一郎氏と進次郎氏を足して2で割った感じです。


(質問)女性ならば、ルペン=田中眞紀子さんではどうでしょうか?もしくは、中山恭子さんとか。

(堀氏の回答)田中真紀子さんとも違いますが、中山恭子って、夫の 中山成彬ともども、まさに狭量な「極右」。あんなのにマリーヌ・ルペンを比べるのは、ルペンに対して失礼過ぎます。尚、マリーヌは、知識量、センス、雄弁さにおいてハイレベルですよ。日本の政治家で比肩し得る人がいるかどうか大いに怪しい。


(質問)右派は積極財政でも公共投資に拘る側面が日本では見られ、社会保障などは自己責任論、働かざる者食うべからず論から、右派には、むしろ蔑ろにされがちだと私は捉えているのですが、社会保障面に関してはルペンはどうなのでしょうか?マクロンよりは救いの手を差し伸べる感じなのでしょうか?

(堀氏の回答)①積極財政は世界的には左派の特徴です。②従来の右派らしからぬ方針を取ったのがアベノミクスだが、金融緩和ばかり続けて財政出動は途中でやめてしまった、③ルペンは断乎社会保障を守ろうという姿勢を鮮明にしています。④政策としての当否は兎も角、ルペンはマクロンより遥かに経済的弱者寄りです。


仏大統領選。第1回投票で、パリ市内でのルペンの得票は5%未満でした。これを見て、パリという世界都市の矜持だ!移民や難民に対する寛容さの証だ!などと短絡的に称賛するのはトンデモです。市内の居住者は主に中産階級や学生で、ルペン支持の多い低所得の勤労者層は郊外にしか住んでいないのです。

ルペンの言う「国民」や「フランス人」人種化(racialize)されていると思い込むのは、ありがちな一知半解パターンです。歴史や社会や人類学的与件を知らず、検証もしないのは一番ダメ。何度でも言ってあげよう。マリーヌ・ルペンはナショナリストだが、レイシストではない、と。


反レイシストの一部分(or相当部分)は、レイシストの存在を必要とし、無意識に求めているのではないかな?もしレイシストがいなければ、反レイシストとしての自分の社会的存在意義が消えてしまい、「アンチ」の高揚感を味わえなくなるから。(戦闘的無神論者が信者の存在を必要とするのと同じ。)
 否、①このタイプの反レイシストが味わうのは「アンチ」の高揚感ではなく、侮蔑できる事による優越感だろう。②このタイプの反レイシストは、レイシストの存在を無意識に求めるだけでなく、レイシストの藁人形を作り上げる(「問題」はあるがレイシストではない人物を、レイシストだと決めつける。)


その他のツイッターなどからまとめると、ルペンの特徴は、

①フランス文化第一、フランス国民第一、これ以上の移民の受け入れ制限(すでに受け入れた移民を追い出すなどとは言っていない)、国境管理の厳格化(日本並みにする)などからみて、ナショナリストであり右派なのは間違い無い。

②イスラム系に対してはフランス文化になじむべきなどと言っており、確かに不寛容な面がある。

③経済政策は平等重視で社会保障を充実させて労働者の権利を保護、そのための積極財政を主張=典型的な左派の経済政策。

さらに、このことの証拠として、今回の大統領選挙の結果に関する以下データが挙げられます。

フランスは歴史的に「平等主義の地域」と、「保守的・不平等地域」とに分かれるらしいのですが、ルペンは平等主義の地域で支持され、マクロンは不平等主義の地域で支持されているとのこと。

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世代や所得別に見てみるとまた面白いです。

若者に期待されたメランション、70代以上の支持が厚いフィヨン。中堅世代に浸透するルペン。
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所得別に見ると、貧しい層から最も支持を得ていたのはルペン氏で、それに次ぐのがメランション氏だった。マクロン氏は富裕層に推されている。
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この二つのデータから将来を予測すると面白いです。上のグラフから判断して、経済状況がこのままであと10年くらい世代がすすむとフィヨン支持の高齢者が死んでルペン支持の多い中堅層が社会の中心になり、メランションの支持も増えるでしょう。

そして、下のグラフから、貧困層が増えればさらにルペンへの支持が増えると予想されます。今回はマクロンになったとしても、マクロンでは貧困層が拡大するに決まってますから、その次の選挙では反EUのルペンとメランションで大統領を争うようになるかもしれません。

あと、これらのデータを見ると、メランションとルペンへの支持のパターンは、アメリカでのサンダース(若者の期待)とトランプ(中年労働者貧困層の支持)の場合とよく似ています。

と言うことは、親EUと反EUの対立と言うのは、左右のイデオロギーの対立というより、経済的な上下の対立だと言うことです。

そして、アメリカや日本とも共通するものとしては、中道や中道左派、リベラルと言った勢力がグローバリズムをコスモポリタニズム的なものと勘違いしたきれいごとばかり言って、過激な自由貿易や経済自由主義により生じた格差を放置し、労働者の権利・利益を守ろうとせず、国民を豊かにする経済政策をまったく提言できていないと言う点でしょう。

日本のマスコミは経済政策に関してはもっとレベルが低くて、安保とかスキャンダルとかには熱心ですが、経済に関しては、税金のむだ遣い批判=緊縮財政促進ばかりで、結果として新自由主義的の構造改革や規制緩和などデフレ促進・格差拡大の政策しか残りませんので、こうなっている(野田政権以上の超緊縮路線に変質したアベノミクスを批判しない)わけです。

本気で格差を解消しようとか、国民を豊かにしようと思うなら、日銀が通貨発行してそれを財源に財政出動すれば何の問題もないことに気づくと思うのですが、たぶん自分たちはわりと恵まれた生活をしているから関心がなくて気づかないのかどうなのか!?大手マスコミ関係者はかなりの高額所得者ですので。

そのような状況だから、イデオロギーとアンチ安倍しか無い野党では経済が滅茶苦茶になるので、少しだけでも経済をマシにした安倍政権を消去法で支持しているにすぎないのに、どうして支持率が高いのかわからないみたいに思っているようで、絶望的です。日本のマスコミも、いまだに左右の対立しか考えていない、頭の中には鉄のカーテンが降りっぱなし、脳内にベルリンの壁がそびえたっているわけです。

似たようなことが世界中でもおこっているのでしょう。アメリカもフランスも、若者はそれぞれサンダースとかメランションと言う社会主義者、極左候補への支持が多いのは、若い世代ほど格差が深刻だからです。トランプやルペンへの支持が多いのは、地方の労働者階級と言う点で共通しています。

EUやTPPなどは、その圏内で過激な自由貿易、統一市場、人の移動の自由、資本移動の自由を高レベルで認め合うものですから、国境の垣根を下げる政策=グローバリズムです。従って、EUやTPPに反対するルペンやトランプはどちらも反グローバリズムです。

グローバル化は格差を拡大して国民を貧しくするわけですから、左右に関係無く、国民重視ならば反グローバリズムになるのは当然のはず、そもそもグローバリズムの反対はナショナリズムなのですから、右派ならば反グローバリズムになるのが当たり前のはずですから、ルペンやトランプが反グローバリズムなのは当たり前ですが、日本の右派はなぜかみんなグローバリストばかりです。

最近はヨーロッパの左派もナショナリズムを見直しており、「リベラル・ナショナリズム」と言う考え方が注目されています。この考え方によれば、社会保障や累進課税など所得再分配政策の根拠として、「同じ国民どうしは仲間なのだからお互いに助け合うのは当然」となるわけです。

結局、日本の右派はナショナリズム(国民主義)ではなく、ステイティズム(国家主義)にすぎないのかもしれません。政府が強くて、グローバル企業が強ければ、一般国民はどうでも良いみたいな。

でも、日本の右派の大好きなグローバル化にせよ規制緩和にせよ、どちらも国家・政府の権限を弱めるものですから、ステイティズム(国家主義)にもならず矛盾しているのですが。頭が弱いのかな!?単にグローバル資本や経団連にコントロールされているだけかもしれませんが。

そして、左派はと言えば、そもそも反ナショナリズムですから、「国民」と言うくくりが嫌いみたいなので・・・でも国民だからなんとか守れるのであって、そこに外国人や移民までいっぱい入れたら、一国の政府にそんなに多くの人達の権利や利益などをすべて守る能力があるわけないので、国が破綻してしまいます。欲張らないほうがいいです。国が守るのは国民まで。外国人や移民はその次でなければ無理です。

そして、国民の権利を守るためにも、強い政府が必用なのですから、やたらめったら政府の権限を弱めることばかり言ってもダメなのですが、それも理解していないようです。

政府が国民の権利を侵害するのはもちろん論外ですが、中国やロシア、トルコ等ならいざ知らず、今の日本では経済的に貧しくなって行くことのほうが現実問題として深刻なのですが(景気が悪いと自殺者が増えますし)、そのことにあまり関心が無いわけですから困ります。

日本でも格差のあおりを一番受けているのは若い世代です。特に日本の格差はアメリカと違って、世代間格差(正規雇用と非正規雇用)がメインなので、余計に気づかれにくいのです。

若い世代が貧しくても、両親や祖父母が面倒みれば、家計としてはどうにかやっていけますから、ホームレスが街にあふれたりスラム街が形成されたりとかにはなりません。餓死者も出ません。

だから、貧困層が拡大しているように見えないわけですが、その結果として格差が放置され、若い世代がいつまでも親から自立できない社会になってしまうわけです。それは、少子高齢化が爆発的に進むのも当たり前です。

そして、少子高齢化社会と言うのは、そもそもが格差を放置しがちになります。なぜかと言えば、若い世代から貧しくなって行くのですが、高齢者から見た場合、今の若者の生活は自分たちが若かった頃よりは豊かに見えてしまうから、勘違いしてしまうのです。

最近の若者は草食系だとか、リスクを恐れて行動しないとか、自分たちが若い頃は猛烈に働きまくったとか、すぐ精神論みたいなことを言って若者を批判するのも高齢者に多いですが、世の中の変化をわかっていないからそんなことを言ってしまうわけです。

自分の主観ではなく、経済の統計とかデータを見てものを考えないからそうなるのかと思うのですが、本来はマスコミがそういうことをすべきなのに、やらないからでしょう。

そのような状況では、極右だろうが極左だろうが、国民や労働者の生活を良くしてくれる政治家に期待する人々が世界中で増えるのも当たり前だと思います。ちなみに、本当に国民を豊かにしてくれそうな政治家=金融緩和で財源作って財政出動(消費税減税)+反グローバリズム・・・を言う政治家は、たぶん日本にはいないと思います。いても支持する人は少ないでしょう。残念ながら。

北朝鮮の核ミサイルで早めに滅びるか、経済政策の間違いをずっと続けて先細るか、どっちにしても、日本の未来は暗いでしょう。まあ、私の考えが間違っていれば良いですが・・・

ちなみに、今回は右派、左派の言葉をちゃんと定義せずに使いましたが、最近では右翼、左翼の意味がかなり変わっています。いずれ整理してみたいと思います。

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