カーク船長の娯楽日記

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サンダル先生

昨年、突如として日本のマスコミ界では「サンデル・ブーム」のようなものがおこった。

この本がベストセラーになり

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
(2010/05/22)
マイケル・サンデル

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この人の講義が注目され、日本のメディアでも派手に取り上げられていた。

そうやって、日本のマスコミが取り上げるものは、だいたいがろくでもないのが多いので、私も当初は無視するつもりだったのだが、その後、どうやらこの人は日本で取り上げられるアメリカ人学者の中では珍しくまともなほうの人で、少しは読む価値のありそうなことがわかった。

だいたい日本のマスコミと言うか、マスコミ御用達の知識人・文化人らが喜んで紹介したがるアメリカ人の学者の考え方と言うと、「リベラリズム」とか「リバタリアニズム」を主張したものが多い。私は、その手の言説がとにかく大嫌いなのである。

だから、日本のマスコミでブームを引き起こしているサンデルも、これまでと同じように、その手のものだろうと決めつけていた。

ヨーロッパ人の言うことならまだしも、アメリカ人の政治・経済や哲学についての考え方で、日本人が見習うべきことなど、反面教師を除けば、ほとんど無いと思っていたが・・・

ところが、珍しく違うようなのである。

読んでないので正確なところまではわからないが、どうも彼は、リベラリズムを強烈に批判している人のようだ。珍しい。

まあ、白熱教室のほうが日本のマスコミ受けしたのだろう。

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(2010/12/08)
マイケル・サンデル

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これがNHKで放送されてブームを引き起こしたようである。

その、サンデル先生の白熱教室のパロディーとして、サンダルを履いてサンダル先生の発熱教室をやってみた人がおり、その講義の内容を収録したのが、この本である。

現代文明論講義 ニヒリズムをめぐる京大生との対話 (ちくま新書)現代文明論講義 ニヒリズムをめぐる京大生との対話 (ちくま新書)
(2011/06/08)
佐伯 啓思

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実際には、サンダルも履かず。そして内容も予想通り白熱も発熱もしなかったらしいが・・・そりゃ、そうだろう。いくら京大生でも日本人であるし、最近の若者である。アメリカ人のように自己主張をガンガンするようなこともあまり無いだろう。

この本も、学生の意見は平凡なものばかりで、著者がしゃべったり解説している部分がほとんどである。まあ、相手が大学の1回生では、こんなものだろう。

ただ、いわゆる新聞の世論調査のようなものとは比率が違っていたのは意外でありかつ面白かった。そこだけは、さすが京大生と言っておこう。

それでも結局は内容のほとんどが著者による普通の一方的な講義になってしまっているのだが、それでもその講義内容が私にはかなりわかりやすくかつ興味深くて、あっという間に読み終わった。こんなものを読んだせいで、釣行記が遅れてしまったが・・・

第1講 現代文明の病―ニヒリズムとは何か
第2講 なぜ人を殺してはいけないのか―自由と規範をめぐる討議1
第3講 沈みゆくボートで誰が犠牲になるべきか―自由と規範をめぐる討議2
第4講 民主党政権はなぜ失敗したのか―民主主義をめぐる討議1
第5講 政治家の嘘は許されるか―民主主義をめぐる討議2
第6講 尖閣諸島は自衛できるか―「国を守ること」をめぐる討議
第7講 主権者とは誰か―憲法をめぐる討議
第8講 ニヒリズムを乗り越える―日本思想のもつ可能性

ただ、「現代文明の本質はニヒリズム」であると言う部分の説得力はイマイチな気がする。ニヒリズムを生みやすいと言うくらいならわかるが、

そして、その克服のために「西田哲学」を持ってくるのはどうだろうか?この部分については、ほとんど説得力を感じなかったが・・・

しかし、その部分を割り引いても、この本は現代文明のかかえる重要な課題を提示してすっきりと解説しているので、多くの人に読んでもらいたい本だとは思ったが・・・。

で、順番は逆だが、次はサンデルのベストセラーのほうを読んでみようかと思っている。
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