カーク船長の娯楽日記

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効果を実感!?

Aという前提からBという結果を導き出す・・・これは、ある種の論理的な思考である。

しかし、論理的であっても、論理に飛躍がある場合には正しくないのは当然のことである。

では、「あるサプリメントを飲んで効果を実感した人がいる」という前提から「そのサプリメントは有効である」という結論を導き出すことができるだろうか?

結論は・・・「できません」が正解である。



たとえば、仮の話として、今、KJNというサプリメントを考えてみよう。これがどうやら関節痛に悩まされている人たちに「痛みが改善する」というウワサによって売れているとする。

普通に考えれば、医薬品として認可されているものでなければ、医学的に見て効果があるとは考えにくい、だから医薬品としてではなくサプリメントととして販売されている訳である。

さらに、「その物質を関節に直接注射すれば効果は期待できるが、口から飲んでも消化されるだけで、効果があるとは考えにくい」と言う人もいる。

果たしてどうなのだろうか!?

そこで、商品を売りたい側はどうするかと言えば、ここで「効果を実感した人たちの声」を紹介するわけである。

あの人も良くなったと言ってます、この人もよくなったと言ってます・・・云々。

ただしその際には、「個人の感想です」と断りを入れねばならない。テレビのCMでも、ものすごく拡大しないと読めないくらい小さい文字ではあるが(笑)、きっちり表示されている。

何故か。それを入れないと、本当に「効果がある」と言ってしまうことになるからである。それはできない。売る側が効果ありと言ってしまえば薬事法違反である。ということは、やはり効果が無いでは!?

「効果があると言っている人がいる」のと「効果ありと言う」のとでは一体何が違うのか!?

話がわかりにくくなってきたが、では少し戻って、まず考えなければならないのは以下の論証が正しいと言えるかどうかである。

KJNを飲んで効果を実感した人がいる

(だから)

KJNは関節痛に有効である


この理屈は成り立たない、と言うか、「効果を実感した人がいる」というだけでは、有効であることの根拠にはならない。

まず、何人の人がKJNを飲んで、そのうち何人の人がどの程度良くなったのかというデーターが必要である。

そのデータを見ない限りは、1万人に1人の超ラッキーな人なのかどうかもわからない。

そこまで極端でなく、もう少し多い場合はどうか。

それも程度問題で、あまり少ないようなら、本当に有効とまでは言えない。他の原因で偶然に良くなっただけかもしれない。すぐに効果があらわれるものではない場合はなおさら。他にいろんなことを試してそれで治ったとも考えられる。

では、試した人たちの大半が「何らかの効果を実感した」とすれば、この場合はどうか?さすがにこれくらいになると、他の理由で偶然に治ったとは言えないのは確かである。

なら有効と言えるか!?

この場合も、この結果だけから有効とまで言うことはできない。効果の程度にもよるし、何より、効果の検証方法がきちんとしたものかどうかが問われる。

普通に考えれば、プラセボ効果の結果と考えるのが妥当なことが多い。

プラセボ効果(=偽薬効果)とは、不思議なことだが、薬でないもの(単なる砂糖水みたいもの)でも、効果があると信じて使用すると、有効成分がまったく含まれていないにもかかわらず、治療効果があらわれるという現象のこと。

メカニズムに不明な点は多いが、現象としてはずいぶん昔から知られている。

特に、痛みに関してはかなりプラセボ効果が出やすいらしい。

なので、薬として効果があるかどうかをちゃんと調べる際には、対照となる偽薬とKJNとの両方を使って、二重盲検法というやり方で行わなければならない

統計的に見て有効と判断できるだけの割合の人に効果があって、かつプラセボ効果以上の効果があるということが二重盲検法によって証明されてはじめて、「有効である」と言える訳である。

ここまでちゃんとやっていないものは、「根拠が乏しい」と言われて当然だし、テレビコマーシャルをがんがんやることで売ろうとするならば、「かなりあやしげな商売である」と言われてもしょうがないのではないだろうか?

少なくとも、「効果を実感している人がいるのだから、有効性を否定するのはおかしい」と言う主張が成り立たないのは間違いない。

何より、そもそも売る側は、「効果がある」とは言ってない。あくまで「効果を実感している人がいる」と言っているだけなのである。

ただ、買う側が、勝手にその前提から「効果があるのだろう」と言う結論を導き出しているだけの話である。

テレビCMのパワーには恐るべきものがある。というか、実際には口コミでも広がっているのかもしれないが・・・
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