カーク船長の娯楽日記

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財政を黒字にするとどうなるか

タイトルにある、財政を黒字にするとどうなるか、と言うのは、ようするに「国の借金が大変だから、政府の財政を黒字にして借金を減らさなければならない」と言うのが勘違いの大間違いと言う話をしようと思います。

結論を先に書くと、「政府が財政を黒字にすると、その後は国内の経済が必ず破綻して、その結果として財政は大赤字に逆戻りになる」と言う話です。だから、「政府の財政黒字」は、やってはいけないのです。

まあ、順番に書きましょう。

あいかわらず、節目節目で「国の借金」のニュースが報道されています。内容は不思議とまったく同じで、国民1人当たり何百万円の借金うんたらかんたらで、内容が金太郎飴のごとく各社同じなのは、財務省の記者クラブで配られる資料をそのまま垂れ流しているだけだからです。

この状況を見て、日本で(世界で?)数少ないまともなエコノミストである宍戸駿太郎大先生(2016年に92歳で亡くなられましたが)は、まるで大本営発表の時代のようだとおっしゃっていたそうです。

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実際、「日本の好景気がいざなぎ越え」だとか、「消費増税しても経済に悪影響は出ない」などの情報をふくめて「大本営発表」と言われていたようですが、まったくその通りです。

そのような前提にもとづいて、今の日本政府(と言うか財務省)は、日本の国家財政の黒字化(プライマリーバランス黒字化)目標を立てて、ちゃくちゃくと実行しつつあります。財政はどんどん黒字に近づいています。

まあ、一般常識で考えると、赤字が続くといずれ破綻すると思ってしまうのは当然かもしれませんが、国家経済は常識には一致しません。

そもそも、(1)国家財政が黒字の国は存在するのか?(2)日本は財政が黒字だったことはあるのか?(3)黒字になるとどうなるのか?それを考えてみたいと思います。



(1)財政が黒字の国

まず、国家財政が黒字の国はほとんどありません。あるとしたら、産油国くらいのようです。産油国のように輸出しまくれば、他の国に赤字を移転できますので、国家財政は黒字になります。

しかし、誰かの黒字は別の誰かの赤字ですから、輸出しまくれる国以外で政府が黒字になれば、民間全体では同じ額の赤字が発生します。このことは、簿記三級の知識があればわかるようですが、普通の人は簿記を知らないので、なかなかピンとこないようです。

でもこれは1+1=2と同じレベルの話です。

政府の黒字額 = 非政府部門(家計+企業+海外)の赤字額

必ずこうなります。

ですから、政府が黒字と言うことは、同額の赤字が民間側に発生していると言うことなのです。もちろん輸出超過なら海外に赤字を移転できますが、産油国以外では不可能。日本程度の輸出額では財政を黒字にするには到底足りません。唯一、ドイツがEU域内外に輸出しまくってそれに近いことをやっています。TPPなどやって仮にうまいこと行っても、輸入も増えますから無理です。

そもそも日本は輸出大国ではなく、貿易依存度の低い内需中心の経済の国なので、真似はできません。これも多くの人が誤解していることですが、データを見るとそうなのです。なんとなくイメージで語る人や日本経済新聞ばかり読んでいる人はむしろマクロ経済をわかっていないのです。

話をもどして、財政が黒字の国と言えば、実は、ギリシャやアルゼンチンは一時的ですが財政は黒字でした。しかし、黒字にした直後に財政破綻しました。

そもそも、財政が悪化する原因は、何でしょうか?無駄使い!?これこそ国家経済と自分の金遣いをごっちゃにしたよくある勘違いです。

財政が悪化するのは、景気が悪いからです。景気が悪いから税収が減って、景気対策で支出が増えるから財政赤字が拡大するのです。そして、そんな状況で財政を無理矢理に黒字にしようとすると、経済が悪くなるのを放っておくどころか、とどめを刺すことになります。

だから、ギリシャやアルゼンチンは財政を黒字化した翌年には、税収が枯渇したような状態になり、財政破綻したのです。

なので、景気が悪いのに無理矢理に国家財政を黒字化させるのは、経済を崩壊させてかえって財政を悪化させるので、一番やってはいけない政策です。



(2)日本で財政が黒字だったことはあるのか?

ギリシャやアルゼンチンのように不景気の時に無理矢理に財政を黒字にするのではなく、経済が好調で財政が黒字になることはあります。日本で経済が好調だった時と言えば、それはバブルの頃です。実際、この頃は財政が黒字でした。

しかし、これは良いことでしょうか?

これも簿記三級の知識があればわかることですが、先ほどの、誰かが黒字だと別の誰かに同額の赤字が発生していることになります。また、誰かが負債を増やせば、別の誰かが同額の資産を増やしていることになります。

そう、バブルと言うのは、民間が過剰に借金して投資している状態です。民間が借金しまくって赤字を拡大させたから、政府の財政が勝手に黒字化しただけのことです。

民間は政府と違い、どこまでも負債を増やし続けることはできませんので、いずれはバブル崩壊するわけです。つまり、バブル期の政府の財政黒字は民間の債務超過と言う不健全な経済の結果と言うことになります。

以下、この本の中の図からの引用ですが、


日米で過去に財政が黒字化した時期と、その後どうなったかについてです。

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これを見ると、19世紀以降、アメリカでは国家財政が黒字だったことが7回ありますが、日本はバブルの頃に1回だけのようです。そして、その内容は興味深いものです。

アメリカは7回の財政黒字のうち、その6回が大恐慌を招いています。これはたぶんギリシャ・アルゼンチンパターンでしょう。不況時に国家財政を黒字化したために、民間の赤字が拡大して経済恐慌を招いたのだと思います。

1993-97年はITバブル、つまりIT部門への民間の過剰な(借金しての)投資による赤字の大幅拡大の結果として、アメリカ政府の財政が黒字化していたと言うことです。当然、その後はバブル崩壊しています。

(3)国家財政が黒字化するとどうなるか?

以上のことから、国家財政が黒字化するとどうなるか?ですが、それは二通りあり、①不況時の無理矢理な国家財政黒字化では経済が破綻してしまうか、②民間経済のバブルによる国家財政の黒字化では、その後のバブル崩壊により経済が破綻するか、①②のどちらかと言うことになります。

結果、どっちにしろ、政府の財政黒字化は、経済を破綻させる(当然、財政は悪化する)と言うことになります。

そして、今の日本がやろうとしているのは、明らかに不況時の無理矢理な国家財政黒字化であり、これこそがギリシャへの近道と言うことになります(もちろん、日本政府にデフォルトはありませんので、ギリシャとまったく同じにはなりませんが)。

要するに、財政黒字は絶対に持続不可能であり、国を滅ぼします。逆に、財政赤字を続けることは可能であり、問題はインフレだけなので、インフレ率が一定範囲内におさまるように赤字を続ければ持続可能です。

最近は、政府や行政機関が黒字になると、国民や市民が喜んだりするような状況があったり、政府や地方自治体がお金を使おうとすると、それをあたかも自分の金が使われたかのように反応して反対する人が増えていますが、根本的に間違っています。

誰かの赤字は別の誰かの黒字です。誰かの負債は別の誰かの資産です。

今の日本では、政府は財政赤字を拡大するのが正しいのであって、間違ってもプライマリーバランスを黒字になど、してはいけません。

一番てっとり早いのは、消費税を廃止して、そのぶんを国債発行でまかなうことかと思いましたが、池戸万作氏の計量シミュレーションによると、これだけでもほとんどインフレにはならないそう(つまり財政赤字の拡大が足りない)です。

消費税廃止+αの30兆円規模の財政出動で、やっとインフレ率2%目標に到達するとのことなので、今の日本は財政赤字が全然足りない状態なのです。

30兆円もあれば、社会保障、医療や介護、年金制度の充実などいくらでもできます。そうやって国民が安心すれば、お金を使って自然に経済は好転してGDPが増えれば税収の自然増により、財政は勝手に改善します。北風と太陽の話と同じです。

ただ、国民全体が不信感と悲観的になっていますので、こういう話を信じないようになってしまっているのが問題です。民主党政権の「埋蔵金」詐欺で懲りているのかもしれません。あとは、国民性?として悲観的な物の見方を好む病的なところが日本人にはあるように思います。

でも、いいかげん、「財源が無い」とか、「国の借金は将来世代へのツケ」とか、「国民1人当たり何百万円の借金」などと言うプロパガンダから目覚めなければ、日本と言う国が、たかだか「金が足りない」と言う理由だけで滅びてしまうでしょう。

お金とはそれ自体が負債なのです。また、誰かが借金することでお金が発生します。だから、みんなして借金を返せば、日本からお金が消えてしまうのです。これが理解できないなら、MMTを勉強しましょう!

さすがにこの本は難しすぎるので・・・



とりあえず、上で引用した本などは電子書籍しかありませんが、250円と安いですし。

ただ、私としては中野剛志氏の2冊を激しく推します。

       

多くの人に読んで欲しいな〜、まあ、ちょっと値段が高いですし、個人的には何もトクすることはありません。でも、世の中への認識が変わります。逆にそれがストレスになって受け入れがたい人のほうが多いのかもしれませんが・・・。

ともかく、政府の負債と民間の負債はまったく意味が違います。「国の借金」とか「政府の累積債務」と言う言葉を変えた方が良いという意見もあります。

MMTで有名になったケルトン氏は、「国の借金(政府の債務)」とは、「政府が民間に供給した通貨の総額のうち、税で回収していない残りのぶん」と言う意味にすぎないので、この額そのものを気にすることは意味のないことだと言っています。

どこの国も、政府の債務は増え続けています。でも、日本やアメリカなどのような供給能力の高い先進国でかつ自国通貨を発行できる国では、借金が増え続けても、そのことで何か問題がおこったことはありません。ありえるとしたらインフレ悪化くらいですが、それも実際には日本などデフレですし、アメリカもインフレ率2%も行かない程度の低インフレです。ですからむしろ、借金を減らそうとすることが悲惨な結果をもたらしてきたのです。

その国の経済力とは、物やサービスの生産能力、供給能力のことです。日本にはこれが十分にあるはずなのに、お金が足りないために、その能力が十分に発揮されない状態が続いています。その供給能力の範囲で財政を拡大すれば、インフレが悪化する心配もありません。物価は需要(=通貨の量)と供給で決まるのですから、当たり前です。

お金は、誰かが借金することによって発生し(信用創造)、借金返済で消えるわけですから、民間が借金しないデフレの時期に、政府まで借金を減らせば、お金そのものが日本中から消えてしまい、その結果として、本来なら供給することのできる物やサービスを誰も手に入れることができなくなり、国力=供給能力、生産能力が無駄になり、いずれ消えてしまいます。

それは日本と言う国が発展途上国に逆戻りすることとほぼ等しいことなのです。現に、「観光立国」など叫ばれているように、産業の無い途上国に日本は逆戻りしています。

今の日本のように、民間が借金しない状態ならば、政府は借金を増やしても何の問題もないどころか、むしろそうすべきなのです。それを、緊縮財政によって無理矢理民間に赤字を押しつけるような真似をしてはいけないのです。

国民ももっと賢くなって、政府の財政が改善してよろこぶような自殺行為をやめるようにならなければと思います。

あと、「誰かの黒字は別の誰かの赤字」が理解できない人は、この本を読んで勉強しましょう。