カーク船長の娯楽日記

周回軌道上から地球を眺めつつしたためた恒星日誌
ホームページへ     
TOP ≫ CATEGORY ≫ 政治・経済・社会
CATEGORY ≫ 政治・経済・社会
       次ページ ≫

スティグリッツの有意義な提言

「現代経済学は、よくいって驚くべき無能をさらし、悪くいえば事実上の加害者でありつづけた」
                 ポール・クルーグマン(アメリカの経済学者)

170317krugman.jpg




3月14日、スティグリッツと言うアメリカの(まともな)経済学者が来日して、経済財政諮問会議でかなり有意義な提言をしてくれたのにもかかわらず、マスコミは完全に無視しています。政治問題ですら、あいかわらずワイドショー的な価値を優先する報道ばかりで辟易としますね。

スティグリッツ、クルーグマン、ピケティ、シムズ・・・みんな日本に来た時にマスコミで少しだけ取り上げられますが、消費増税はやめたほうが良いと言ったとたんに、マスコミからは完全に無視されています。

最近、主流派経済学の間違いがどんどん証明されてきて、さすがにまともな人が出てきました。そして、主流派の中からもシムズ氏のような人もでてきたわけですが、日本のマスコミは財務省の広報機関のようになってしまっている、もしくはいままでの間違いがバレるのが怖いのか、増税するのに都合悪い真実は隠したいのでしょうかね。

日本政府が財政破綻などするはずがないのは、多少のこと(債務のほとんどが円建てでありるため日銀が買い取れば債務不履行も長期金利の高騰もあり得ない)を知っていれば、わかりきった事実なのですが、財務省が増税したいために危機をあおりまくり、御用学者が財務省に都合の良い理屈をこねくりまわし、マスコミは経済オンチのために財務省記者クラブで発表されている資料を垂れ流すだけで、その結果として一般国民が不安に思っているわけです。

そうやってあおられた国民の不安感を払拭するための有益な手段が、私の尊敬するスティグリッツ氏によって提言されました。彼はノーベル経済学賞を受賞している経済学者であり、主流派経済学ではないし(だから良い)、人格的にも立派な人なので信頼できます。

個人的にはより主流派の理論に近いシムズ氏よりもずっとスティグリッツ氏のほうを信頼しております。(シムズ理論の記事はこちら)。まあ、シムズ理論もスティグリッツ氏の言ってることも、やることは似たようなものですが。緊縮財政をやめて、国債発行を財源にして財政出動をデフレ脱却までやれば良い、です。

スティグリッツ氏の有益な提言は以下の通りですが、日本語訳がおかしいので注意が必要です。以下の記事で「国債を無効化」と書いてあるのは不正確で、英語ではキャンセルですが、「相殺」と訳す方が正しいようです。


スティグリッツ教授:政府・日銀保有国債の無効化主張-諮問会議

170317stiglitz.jpg

→政府債務が「瞬時に減少」、「不安和らぐ」と-スティグリッツ氏
→債務の永久債や長期債への組み換えも提言-金利上昇リスク移転可能

ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ米コロンビア大学教授は14日夕、経済財政諮問会議に出席し、政府・日銀が保有する国債を無効にすることを提言した。

  会議に提出された資料によると、スティグリッツ教授は、政府・日銀が保有する国債を無効化することで、政府の債務は「瞬時に減少」し、「不安はいくらか和らぐ」と主張。また、債務を永久債や長期債に組み換えることで、「政府が直面する金利上昇リスクを移転」できるとしている。永久債の発行は「政府支出に必要な追加的歳入を調達し、経済を刺激する低コストの方法」だとした。

  日本の政府債務については、金利の大幅な上昇で「政府は問題に直面するかもしれない」と懸念を表明。しかし「政府債務を低下させるために消費税を上げることは逆効果」であり、代替案として企業の設備投資を促す炭素税の導入を挙げた。

  スティグリッツ氏は記者団に対し、金融政策では強い経済を取り戻すのに必要な刺激を与えるのは難しい、と説明。財政政策によって、さまざまな分野の構造改革を進めるべきだと述べた。

  スティグリッツ氏は昨年3月、政府が開いた国際金融経済分析会合の初会合に出席し、17年4月に予定していた消費増税について、世界経済が低迷する中での実施は間違っているとして安倍晋三首相に再考を促した。安倍首相は6月、消費増税の再延期を正式に表明した。


なんども書いてますが、日銀は政府の子会社なので、日銀保有の国債については、その気になれば償還も利払いも不要です。償還するにしても、新しく国債を発行して「乗り換え」するだけでも何もかわりません。その時にスティグリッツの言うように、「永久債(つまり償還期限なしの国債=いつまでも返さなくて良い)に乗り換えればわかりやすいと言うだけの話だと思います。まあ、たぶん国会で法案を通さないとできないでしょうから、かなりめんどくさそうですが・・・

いずれにしろ、国債を日銀がずっと保有し続ければ国家財政をまったく圧迫しませんし、インフレになれば勝手に目減りしますし、景気が回復すれば税収が増えますから、その時に余裕があれば新規国債の発行が不要になるので、自動的に政府の負債は減って行きます(対GDP比で減れば良い)。

すでに日銀の金融緩和で、国の借金1000兆円と言われているもののうちの400兆円以上を日銀が保有しています。これは国の借金にカウントする必用がないものですし、上に書いた通り、利払いも不要です。利払いしても子会社なので連結決算ですからチャラと言うか、どっちみち国庫に納付されて戻ってくるだけです。

これで、一体どうやって財政破綻するのでしょうか!?どうやったら金利が高騰するのでしょう!?どうやったら国債が暴落するのでしょうか!?

スティグリッツ氏の言っているようなことと似た方法で他に聞いたことがあるやり方としては、「無利子永久国債」を政府が発行して、日銀が保有している通常の国債を順次それと入れ替えて行くと」、または、「日銀と政府が協定を結んで、一定額の国債を一定期間償還しないことにする」のでも同じようなものだと思います。やり方はいろいろあります。国会で法案を通さずできるやりかたが早くて楽で良いと思います。アホがわーわー騒ぎますので。

このスティグリッツ氏が経済財政諮問会議で発表した資料(PDFファイル)「持続可能で共有された. 繁栄への移行. ジョセフ・E・スティグリッツ. 東京. 2017年3月14 日. 仮訳.」のダウンロードはこちら

ところどころ日本語訳が変ですが、有益なことがたくさん書かれています。多くの人に是非とも読んで頂きたいです。

ちなみみ、スティグリッツも「構造改革」が必用と言ってますが、その内容は一般に言われている改革とは違います。彼は一般に言われている「改革」と言うものを、以下のように評価しているくらいですので。

「グローバリゼーション」、「改革」、「技術進歩」は、約束したことを実現していない。
→過去四半世紀の変化・改革は厚生の低下をもたらした可能性がある。


と言っています。

ではどうすれば?彼は、製造業を回復しようとしても無理なので(世界的に製造業の需要も減っている)、むしろサービス業を中心にした経済にしたほうが良いと指摘しています。

経済がサービス産業を中心とした経済に発展していく。特に、教育・健康医療・他の公的サービス。
・これらのサービスの価値は、市場プロセス「のみ」ではなく、主として社会的に決定される。
・もしこれらのサービスの価値を高く評価し、よい賃金を支払い、良好な労働環境を提供し、十分な雇用を創出すれば、市場における所得格差の拡大を限定することができる。
・高賃金により、これらの職業に対する高い「敬意(リスペクト)」も生まれる。
・民間セクターの賃金も公的セクターの賃金に続く。


最後の項目も重要だと思います。一般に、景気が悪いと安定している公務員叩きが流行しますが、公務員の賃金を減らせば民間もさらに下がりますし、公務員を減らせば若者の雇用が減ってしまいブラック企業に流れる犠牲者が増えることにしかなりません。ただの足の引っ張り合いです。まあ、そういうルサンチマンに満ちた国民ばかりの国は滅びると言うことで自業自得かもしれませんが。

あとは、格差の拡大は経済効率拡大や経済成長にとってマイナスであることを指摘した上で、市場ルールをより平等性の高いものに改革する必用性に言及してますし、仮に増税するならば累進制の高い税制がより良いとも言ってます。さらに、企業の設備投資を促進する点から「炭素税の導入」も提唱しており、興味深いです。少なくとも内部留保に課税するよりは儲かっている企業には炭素税を課税するのが良さそうです。なお、消費税増税は今の日本では逆効果とも言ってます。そもそも、社会保障の財源に消費税と言うのは愚かすぎます。

ちなみに、こちらに、スティグリッツが「人口が減っても経済成長は可能である」ことに関していくつも語っています。彼は知っていると思うのですが、人口とGDPの規模、人口増加率と経済成長率には相関はありません。人口が減るから経済成長できないとか、成熟したから経済成長できないと言うのは、経済成長と言う言葉の意味がわかっていない人の言うことです。

日本人にやたらと「日本はもう経済成長できない」と思いたい人が多い現象は、心理学における「認知的不協和」の解消で説明可能です。

「認知的不協和」とは、人が自身の中で矛盾する認知を同時に抱えた状態、またそのときに覚える不快感を表す社会心理学用語です。フェスティンガーと言う心理学者が唱えた仮説ではありますが、人は、相矛盾する認知をかかえた時には、そのストレスに耐えられずに、いずれか一方の認知を変えることによって不協和を除去しようとする・・・と言うものです。有名な例は以下の通り

喫煙者が喫煙の肺ガンの危険性(認知2)を知る
(認知1)私、喫煙者Aは煙草を吸う
(認知2)煙草を吸うと肺ガンになりやすい

この場合、(認知1)と(認知2)の不協和の解消のため、いずれかの認知を変更または追加補正します。

【解消パターン1】 (認知1)の変更
(認知1)→(認知3) 私、喫煙者Aは禁煙する

【解消パターン2】 (認知2)に追加補正
(認知2)+(認知4)喫煙者で長寿の人もいる
     +(認知5)交通事故で死亡する確率の方が高い

他の有名な例としては、「①酸っぱい葡萄」バージョンや、「②甘いレモン」バージョンがあります。

①=Aが手に入らないからAには価値が無い
(例)ダイエットできない→むしろ食べたいもの食べて早死にしたほうが幸せ

②=Aしか手に入らないからAには価値がある
(例)彼女がブス→友達の彼女よりはかわいい

経済成長できない→そもそも経済成長はもう不可能

若者「金がなくてモノが買えない」→「これと言って欲しいモノがない」
  「彼女ができない」→「そもそも欲しく無い(草食化)」

従って、自分たち自身の認知的不協和の解消のために、経済成長は理論上不可能ということでないと不協和が解消せずにストレスになるわけであり、若者がモノを買わなかったり草食系であったりするのは、そもそも欲しく無いからであると考えないとこれまた不協和が解消せずに辛いから・・・と解釈することも可能でしょう。

「自己欺瞞」と言う言葉もある通り、自分が思っていることそのものも本当なのかどうなのか、心理学的な反応の結果かもしれない・・・くらいのことは考えてみても良いのではないでしょうか!?


最後に、経済学者による経済に関する言有名な言葉を並べておきます。

ジョーン・ロビンソン(イギリスの経済学者)
170317robinson.jpg

「経済学をまなぶのは、経済学者に騙されないためである。」
(正確には→経済学を学ぶ目的は、経済問題に対する出来合いの対処法を得るため、ではなく、そのようなものを受け売りして、経済を語る者に騙されないようにするためである。)

ついでにもうひとつ
「どんな愚か者でも質問には答えられる。重要なのは質問を発することだ。」

これは良いことを言ってますねー。簡単に答を出す奴ほど、よく考えていない奴です。


ジョン・メイナード・ケインズ(イギリスの経済学者)
170317keynes.jpg

「経済学者や政治理論家の思想は、正しい場合にも間違っている場合にも、一般に考えているより、はるかに強力である。世界を支配しているのは、思想以外にないと言えるほどである。

自分は現実的であって、どのような思想からも影響を受けていないと信じているものも、いまは亡き経済学者の奴隷であるのが普通だ。権力の座にあり、天の声を聴くと称する狂人も、それ以前に書かれた学者の悪文から、錯乱した思想を導き出している。」


最後に引用したケインズの言葉にはものすごく納得いたします。




↓国家財政や財政破綻、財政赤字などについてきっちり考えたい方は、このまとめサイトが参考になると思います。
財政再建を問う-財政赤字よりも大切なこと

ちなみに、国家財政に関する話は、マクロ経済になります。マクロ経済をいくら勉強しても、会社経営やビジネスにはほとんど役に立ちません。逆に、ビジネス書をいくら読んでもマクロ経済はまったく理解できません。全然別のものですので。

したがって、ミクロ経済についてしか理解していない企業経営者などに国家財政の話を聞いても、自身の会社経営や家計レベルの発想で考えてしまうために、間違った結論が出てしまいます。企業経営や家計において合理的な経済行動を、国家の財政運営に同じようにあてはめることはできませんので。

そこが、国家財政について考える場合に難しい問題です。役に立たないマクロ経済をほとんどの人が理解していないし、理解することにメリットもないので勉強することにインセンティブが働きません。でも、マクロ経済について一般の理解が低いことが、ある意味で日本を長期的な停滞からぬけだせなくしている一因かもしれません。せめて、政治家やマスコミ、評論家にはある程度マクロ経済を理解して欲しいものです。

私徳と公徳のジレンマ

今年も確定申告と納付をしに税務署に行ったわけですが・・・

170314zeimusyo.jpg

170314zeimusyo1.jpg

170314nouzeigaku.jpg

私なりに大金を追加で納めてきました。納税は国民の義務ですが、納税しているのは国民だけではなく、日本で所得を得れば外国人だって納税してますし、企業などの法人も納税しています。

なので、政治家が「納税者のため」と言ってしまうのは間違いです。政治家は有権者(国民・都道府県民・市町村民)のための政治をすることが第一なのに、納税者のためとか言う政治家は、かなりうさんくさいと思った方が良いでしょう。彼らが思い描いている納税者とは、ハゲタカ外資かもしれません。納税者と聞いたとたんに、それを自分のことだと思うのは、自意識過剰です。

ちなみに、たくさん(?)税金を払うと、普通の感覚ならば、我々の血税を大切に使って下さいとか言うのでしょうが、その発想がデフレの元なんですが・・・。以前に書いた「合成の誤謬」を読んでもらえればご理解いただけるかと。

しかし、負債が大きくなっている政府にもっと金を使えと言うのは、普通の人はなかなか理解しにくいのでしょうかね。私みたいないいかげんな人間でないと気づかないのかもしれません。政府の借金を増やすことは不道徳だと言われたことがあります。

最近、教育勅語がどうたらとか言われてますが、あれも古典的な道徳を12個ほど並べたものですが、道徳と言うのはよく考えないと間違いにつながります。

福沢諭吉だったと思いますが、道徳にも「私徳」と「公徳」の2種類あるわけで、「個人個人が私徳を貫くことによって、社会全体のレベルでは公徳が破壊される」というのがまさに「合成の誤謬」と同じであります。

私徳と公徳は何が違うか!?

たとえば、「世の中の役に立つ良いことをする」「みんなを豊かにする」・・・などと言うのは公徳でしょう。逆に、「自分を甘やかさない」「贅沢をせずに倹約する」・・・などと言うのは私徳です。

倹約すると言うことは、自分や、せいぜい家族にとってはメリットがあるかもしれませんが、過剰に倹約・節約するのは社会全体にとってはマイナスです。自分がいままで使っていたお金を貯蓄にまわすと言うことは、そのぶん他人の所得を奪っているのと同じことになります。

従って、倹約の精神と言う私徳を国民全体で暴走させれば、お互いの所得を奪い合って国民みなが貧困化するわけです。これこそが、合成の誤謬、みんなが「倹約」という私徳を貫くことによって、公徳の次元で大きな社会的デメリットをもたらしているわけです。

この20年間、日本はずっとこれをやってきて、20年以上も経済成長しない国になっているのです。そして経済成長しない理由もわからなくなっています。貯金しすぎなのです。政府はひたすら負債を増やしてますが、民間(主に大企業ですが)では逆にお金を貯めまくりなのです(内部留保)。

もちろん、先の見通しが悪くて給料も減って行く状態で、倹約することは正しいことですし合理的であり間違っていません。だから、こういうご時世に一般国民がお金を使わないことはあたりまえですからそれを誰も責められません。だから政府がお金をつかわないと、この負の連鎖を断ち切ることができないのです。

経済的合理性にさからったことを大規模にできるのは政府しかいませんから、デフレである限りは政府はお金をじゃんじゃん使わなければならないのです。しかも、政府の財源は税収だけではなく、国債もあり、さらには日銀に通貨発行させることもできますから、誇張して言えば、お金などいくらでも作り出すことが可能なのです(適度なインフレになるまで)。

税金(由来の政府の支出)を無駄な使い道で浪費するのは確かに間違いではありますが、景気が悪くて税収が減っているからこそ、デフレ脱却のために財政出動しなければならないのは間違いありません。今の安倍政権は、野田政権以上のすさまじいばかりの「緊縮財政」なのですが、マスコミはそれをまったく批判しませんし、そもそも認識もしていないようです。

こういうご時世では、「緊縮」と言う発想こそやめたほうが良いのですが、自分が必死で倹約生活を送っている人ほど、政府にも同じことを求めてしまって、結局みんなが貧しくなり、自殺行為になるわけです。

こういうことを、マスコミ、評論家、学者(特に経済学者!)、官僚、政治家みんながわかっていないので、20年もデフレが続いて経済成長していない、まさに勘違いと言うか、「合成の誤謬」に気づかないと言うか、私徳と公徳の区別ができていないと言うか、ともかく、考え方のせいなのは間違い無いでしょう。

・・・と、またこの話になってしまった。

トランプとバノンの目指すもの

昨日の続きです。トランプ大統領が誕生した背景には、
(1)ヒラリーがダメすぎ
(2)アメリカ社会の分断の結果
 ① 所得上位0.1%階層による経済および政治権力の支配
 ② 白人 VS その他人種

の要素があったことが大きいのではないかと言う話でした。他にも細かいのがいろいろあるとは思いますが。

とくに、アメリカ社会の分断が大きいでしょうね。社会が分断されれば、分断の結果が選挙に反映されるのは当たり前です。でも1度分断した社会は、そう簡単にもとにはもどりません。「分断をあおるな!」ときれいごとを言ってみても虚しく響くだけです。

では、トランプ大統領はいったい何を目指しているのか、それは実現可能なのかについてですが・・・

大統領の目指す政策は、彼の側近であり影響力が強いとされるバノン氏の考え方をさぐるとわかりやすいのではないかと思います。彼らの嫌いなものには3つあり、そのことから方向性がわかると思います。

(1)有色人種が嫌い
→アメリカの白人支配の継続もしくは白人の地位の維持(向上)

(2)主流派経済学(自由貿易)が嫌い
→保護主義と言うより重商主義を目指している

(3)同盟関係が嫌い
→NATOや日米同盟などへのアメリカの負担は減らしたい


(1)については説明不要かと思います。彼らが不法移民への取り締まりを強化したり、中東の国からの入国を禁止しようとしたのは、これ以上アメリカで白人以外の人種がふえるのを少しでも抑制したいと言う意図によるものです。

アメリカをふたたび昔のようなアメリカに戻したい、人種構成にしろ価値観にしろ、国際関係にしろ、その頃の体制にもどしたいと言うのが彼らの目的です。

トランプが選挙中に繰り返したフレーズ「Make America Great Again」が、まさにそのことを示しています。まあ、この言葉を最初に使ったのはレーガンらしいですが。トランプは就任演説でもふたたび「We Will Make America Great Again」と言ってます。

だから、昔のアメリカにもどしたい、なぜなら昔のアメリカのほうが強かったから・・・ですが!?

でも、白人中心にしたからと言って、再びアメリカの国力が増すのかと言うと、普通の人が考えればそれは関係無いでしょうが、なんせこれは感情論と言うか差別的な心情ですからどうにもなりませんね。いずれにしろ、彼らは昔のアメリカ、1930年代くらい?に戻したいみたいです。

これについては、まあ実現は無理でしょうから、日本としてはあまり気にしなくて良いと思います。米国内で勝手にもめて下さい。


(2)について、トランプは経済学の主流派が主張する、自由貿易によって最終的にどこの国もウインウインになれるから保護主義よりも全体にとってメリットになると言う説(リカード「比較優位論」)について、私はこの説を信じてませんが、トランプやバノンは信じる信じないではなく、嫌いなのです。

彼らの望んでいるのは、他国とのウィンウィンの関係ではなく、とにかくアメリカが勝つことです。そのためには、アメリカに都合の良い部分は自由貿易でやり、都合悪い部分は保護主義でブロックするつもりです。

彼らの目指しているのは、「重商主義」です。「重商主義」とは、現代では「輸出で経済成長」と言うのと似たような意味になります。まあ、貿易黒字で国の富を増やそうと言う感じでしょうか。

安倍首相も「輸出で経済成長」と言ってますので、一見して良さそうですが、やり方に無理があるのと、そもそも「自由貿易」によって経済成長できるとは限りません。輸出だけでなく、輸入も増えますので。

経済成長(何度も言ってる通りGDPがふえること)に関係あるのは、総輸出額ではなく、「純輸出(輸出から輸入を差し引いたぶん)」です。なので、輸出が増えても輸入が増えれば経済成長しません。

なので、本気で輸出で経済成長しようと思うならば、『輸入を制限し輸出を拡大する』と言うことになりますが、これがまさに「重商主義」です。輸出に関しては相手国に自由を要求し、輸入に関してはブロックするのです。貿易で経済成長を目指すなら、重商主義になります。安倍ちゃんはわかっているのかな!?わかっていて言っているならかなり賢いですが。

しかし、どこの国もがそんなことをするのは不可能で、輸出と輸入がバランスしているほうが良いと考えるのが一般的なようです。このへんは私はよくわかりません(勉強中)。

特定の国がひたすら輸出ばかり増やして輸入しないと、どこかの国がひたすら赤字をため込むことになります。そんな状態が持続可能かどうか、考えればわかると思いますが、ところが中国・ドイツ・日本はひたすら黒字を続けているのです。なぜそんなことが可能かと言うと、それらの黒字国の反対側に、常に赤字の国があるからです。それがアメリカです。

アメリカは、貿易赤字だけでなく、経常赤字国であり、それが長年にわたって続いています。その一方で、中国・ドイツ・日本が経常黒字をずっと続けているのです。

これを、グローバル・インバランスと呼びます。

こんな状態をいつまでも続けるのは困難だし異常だろうと言う認識がアメリカにはあるのでしょう。アメリカは中国・ドイツ・日本が作ったものをたくさん買うことで世界経済を支えていると言う見方もできます。まあ、ドルが基軸通貨だからこんなことができるのですが、そのせいでアメリカは成長できなくなっていると言うふうにも考えられます。

日本が経常黒字なのはデフレだからと言うこともあるので、デフレ脱却は実は両国にとってウィン・ウィンの解決方法なのですが(日本の内需が拡大すれば輸入も増える)、その方向性に向かうかどうか・・・

話がそれましたが、いずれにしろ、自由貿易やグローバル化によって、アメリカの一部の階層の人達は莫大な利益を得てきましたが、国力そのものは低下したとも言えます。そのぶん中国が台頭してきましたが、それこそ明らかにグローバル化の恩恵によるものです。

100年前にも世界はグローバル化しましたが、そのグローバル化を主導したイギリスは、自らの主導したグローバル化の結果として衰退し、そのぶん日米が台頭したのと同じことです。グローバル化は国家間の力関係を変化させます。

トランプやバノンの目的は、アメリカをふたたび偉大な国にすることですから、経済理論でどの国も豊かになるとかは関係無く、とにかくアメリカがナンバーワンになれるように、アメリカに都合の良い自由と保護とを使い分けようと言うことでしょう。

「お前のモノは俺のモノ。俺のモノは俺のモノ」・・・まさに、ジャイアンです。


(3)同盟関係が嫌い・・・ですが、これはイマイチよくわかりません。最近になって軌道修正していますが、当初はトランプも「NATOなど時代遅れ」などと言って批判していました。

しかし、アメリカの経済力は昔と比べてかなり低下していますので、アメリカ一国がヨーロッパ・中東・東アジアの3つの地域で軍事的覇権を維持するのは不可能に決まっています。それをやろうと言うネオコンのほうが頭がおかしいのです。

これらの3つの地域のうち、アメリカにとって利益の少ないところからは徐々に撤退して行く方向に向かうのは、トランプでなくてもあたりまえと思います。違うとしたら、撤退のスピードくらいでしょう。

とりあえず、アメリカにとっての最大の貿易赤字国は中国ですから、中国を封じ込めるつもりはありそうなので、急激に東アジアから撤退することはないかもしれませんが、いずれ徐々に撤退して行くでしょう。


それでは、最後に、これら3つの政策が実現可能かどうかと言う話になります。結論から言うと、たぶん不可能だろうとのことです。

理由は、とにかくアメリカのマスコミのほぼすべてが反トランプなので、今後いろんな情報がでてきて政権運営がままならなくなると予想されますし、出てくる情報によっては議会で弾劾される可能性もあります。

そもそも彼の主張は共和党の主流派の主張ともずいぶん異なっていますから、共和党としてはトランプをやめさせて、副大統領のペンスを大統領にしたほうが良いと考える可能性がかなり高いでしょう。

そうならないにしても、暗殺されるだろうと言っている人もいます。

いずれにしろ、トンランプ政権は長くもったとしても2−3年くらいなのではないかと言うのがおおかたの予想のようです。

最後に、トランプはバカではないと言うこともつけくわえておいたほうが良いでしょう。

日本のマスコミを見ていると、とにかくトランプが嫌いだから、彼をバカにして見下して憂さ晴らしみたいなことにばかり熱心ですが、そんなことをして何の意味があるのか!?同レベルです。

彼がバカではないのは、生い立ちを見ればある程度わかります。

彼は、父親が不動産業でものすごい金持ちの家で生まれ育ちましたが、少年時代はグレてしまい、つねにナイフを持ち歩いてニューヨークのブロンクスとか下町でケンカをふっかけてばかりの悪ガキだったらしいです。

しかし、さすがに親がこのままではヤバイと思って、無理矢理にミリタリー・スクール(全寮制で規律がものすごく厳しい)に入れたところ、めきめきと頭角を現してリーダーになり、卒業生代表になるほどだったそうです。

その後、親の事業(不動産業)の面白さを知って事業を継ぐ気になり、大学はペンシルベニア大学ウォートン校の不動産の専門学科を卒業したらしいです。この大学はアイビーリーグの超名門校で、世界的に高評価を受けているビジネススクールですから、バカでは卒業できないでしょう。

彼の性格・人格が滅茶苦茶で下劣なのは間違い無いとしても、バカではありません。

民主的な手続きで選ばれた大統領をバカにして喜ぶ、うっぷんを晴らすと言うのはレベルが低すぎると思いますし、論理的に批判するのではなく感情的に罵倒したり見下したりするのは人間の質が低い奴のすることですので、もうちょっとまともで冷静な分析にもとづいた批判や対策を日本のマスコミにはお願いしたいですが、まあある種の同類(自分の好き嫌いでしか物事を判断できない)ですから無理でしょう。

特に、日本ではワイドショーで政治を取り上げる場合にその内容がひどいですね。最近で言えば、ワイドショーがもてはやす「改革」なども誰のためにもならないことを勘違いの正義感と事実誤認と非科学的感情論で盛り上がって偽のリーダーを担いでいるだけです。国家財政に関しては財務省とその御用学者の説を垂れ流して偽の財政危機を煽って国全体を弱体化させ続けています。

日本のマスコミはアメリカ大統領のことをどうのこうの批判する前に、まず「自己批判」したほうが良いのではないでしょうか。

トランプ大統領誕生の理由

トランプ大統領について、まず、アメリカのマスコミで彼について正確に報道されていないので、それをただ輸入しているだけの日本のマスコミ報道を見ても肝心な部分がわからないので、どうしたものかと思っていました。

この前の大統領選挙で、アメリカのマスコミ関係者の96%はヒラリーに投票し、トランプに投票したのはたった1%との調査結果があるようで、このことからわかる通り、アメリカのマスコミ報道はかなり偏ったもの、少なくとも国民は半々に割れているので、一般国民とマスコミ関係者で意識の分断があるのは間違い無いようです。

最近、アメリカ在住の評論家の人の話を聞きまして、おかげでかなりトランプのことがわかりましたので、そのことをまとめておきたいと思います。

(1)なぜトランプみたいな異常人物が大統領になってしまったのか

(理由1)ヒラリーがクズすぎるから

アメリカで、社会主義者を自称するサンダースが民主党の予備選でいいセンまで行った理由とも共通しています。一つは格差の問題ですが、もうひとつはやはり、ヒラリーがクズ過ぎるからということも一因のようです。彼女の健康問題とかは小さいレベルの話です。

ヒラリーがどのようにクズなのか、3点あります。

(1)典型的な汚職政治家である
(2)ウォール街とつるんでいる
(3)戦争したがる。

この3つです。一番ひどいのが(1)で、メール問題の本質もここにあるようです。

彼女が国務長官時代に国務省のメールアカウントを使用せずに、自宅にサーバーを置いて私的なアカウントで業務上のやりとりをしていた最大の理由は、国務省に通信記録を残したくないと言う意図によるものです。うっかりではありません。計画的です。そして、まわりの取り巻きたちはみんな知っていたそうです。

目的は、国務大臣の立場を利用して世界中から汚い金を得ているのを隠すためです。

アメリカの国務大臣ともなれば、世界中から陳情のために面会の依頼などひっきりなしです。彼女は、そういう要求が来た場合に、会ってやるかわりに、「クリントン基金」にいくらいくらの金を振り込め、と言う調子で、世界中からダークマネーをかき集めていたとのことです。そして本来は慈善事業のためのものである「クリントン基金」のお金の大半が使途不明だそうです。

クリントン財団に関しては、金銭スキャンダルが非常に多いようです。このことが、メール問題で露出してアメリカ国民はみんなヒラリーなど汚職政治家の典型で汚いやつとだとの認識です。

トランプも会社経営者として大統領になると利益相反の問題が指摘されていましたが、ヒラリーはその上を行っていると言っても良いのではないでしょうか!?

あとは、アメリカの政治資金のしくみで日本と違うのは、アメリカでは政治献金が無制限である上に、財団などを介せば匿名で迂回献金などやり放題なので、その結果として、アメリカの所得トップ0.1%の人達が経済権力だけでなく、政治権力までもを得てしまっているわけです。

ヒラリーはそこいらとズブズブの関係ですが、トランプは大統領選の政治資金のほとんどを自分の財産から出して選挙運動していたので、そういう意味ではヒラリーより遙かに信頼されていた、すくなくともウォール街とズブズブではないと思われていたようです。

それから最後に、理由はわかりませんが、彼女はとにかくイラクやシリアに対してイケイケどんどんです。そしてロシアともイケイケどんどんです。世界中に手をだしまくる、まるでネオコンのようです。理由はわかりません。イラクやシリアにイケイケなのは、イスラエルとつながっている(これも金のため?)のかもしれませんが、それはわかりません。ロシアに強行なのは、メールを曝露されたうらみでしょうが。

少なくとも彼女が大統領になっていたら、イラクやシリアはまた滅茶苦茶になってその度合いを増していたでしょうし、ロシアとの関係も今以上に悪化していただろうとのことです(彼女の個人的理由により)。

こんな人物なのですから、むしろ共和党がトランプでなかったら、もっと大差で選挙に負けていたのではないでしょうか!?

リベラル政党であるはずの民主党の大統領候補が、国民の格差ほったらかしにしてきれいごとと自己利益の追求ばかりに熱心なので、一般大衆が愛想を尽かして極右に走ると言うのは、ヨーロッパでも同じ傾向です。リベラル政治家やリベラルメディアの質の低下によるためでしょうが、これはは日本でも同じなので、世界的な傾向なのかもしれません。


(1)なぜトランプみたいな異常人物が大統領になってしまったのか

(理由2)アメリカにおける今後の人口動態の変化

これは実はマスコミでは言論の自主規制が行われていて、アメリカでは公に議論することがタブーになっている問題のようです。具体的には、「アメリカにおける人種構成の変化」の話です。

ごくおおまかな数字ですが、アメリカと言う国は、1965年までは移民の8割がヨーロッパの白人で、それ以外の人種は2割以内という感じで制限していました。それは、アメリカの人口構成が、ほぼ白人8割強、その他1割強だからです。

ところが、1965年に移民法が改正されて、人種や国籍での制限をやめてから、白人の比率が徐々に下がりはじめ、最近では白人6割強、黒人1割強、ヒスパニック2割弱になっています。

そして、このペースでの移民の流入と、白人の少子化を計算に入れると、あと数年で白人の比率が5割と切るだろうとの予測があるようです。

アメリカにはマイノリティーを保護するしくみがいろいろありますが(アファーマティブ・アクションなど)、こういうしくみは、弱者が少数だから成り立つのであって、それなりの数になってくると維持が困難になってきます。

世論調査によると、白人の5割ほどの人たちが、「自分たち白人こそ差別されている」と感じているようです。実際、白人の中年では失業や自殺、薬物中毒などが急増して有意に死亡率が増加していると言うデータもあります。

マスコミは、トランプが分断を煽っていると報道していますが、実際はむしろ逆です。アメリカのマスコミが分断の事実を認めずに封じ込めよう、見ないようにしよう、議論しないようにしようとしているところに、多くの白人が不満を持っていると言うのが現実です。

ただし、この問題は解決不可能だと私は思います。これから、白人とそれ以外の比率が半々になれば、何をどう頑張っても分断は進むに決まっています。

リベラル方面の方は、多様性が大事などときれい事を言いますが、多様で異なる文化・宗教・政治信条を持つ人たちが一緒にまじれば、ひたすら衝突が繰り返されるのは、わずかな想像力がありさえすれば簡単にわかることです。その解決策はありません。

実は、民主主義も成り立たなくなります。人種や宗教で対立してひたすら争いになるからです。選挙の結果を認められなくなれば、最悪の場合は殺し合いになる可能性すらあるでしょう。

日本を考えればわかると思いますが、少なくとも人種・民族・宗教などが選挙の争点になったり、議員を選ぶ基準になったりは今のところあまりしていません(少し出てきていますが)。民主主義が穏当に成り立つためには、有権者みんなが、同じ国の国民であり仲間であると言う感覚が不可欠なのです。

グローバル化がすすめばすすむほど、人の移動がはげしくなり、移民の流入が生じる結果として、逆に民族主義や差別、争いが多くなるのは当たり前ですし、そうなると、まともな民主政治も成り立ちません。

話をもどしますと、アメリカにおける白人の地位低下に危機感・不安感・恐怖心を抱いている白人層の支持がトランプに集まったため、と言うのがトランプ大統領誕生のもうひとつの理由です。

すべて書き切れませんが、長くなったので一旦おわります。

次回は、トランプがいったい何を目指しているのかについて、アメリカ在住の評論家から聞いた話の続きです。

言葉の意味の勘違い

誤解されているよなあ、と思う言葉は「国の借金」の他にも結構ありまして、「経済成長」と言う言葉もそうでしょう。

一般の人は知らなくてもしょうがないですが、新聞や雑誌などで経済について知識人・文化人が経済・社会を語るときに、経済成長を完全に誤解または意味を知らないとしか思えないような言説をよく目にします。

中日新聞の記事「この国のかたち 3人の論者に聞く」から引用です。

◆緩やかな連帯を築け ラッパー ダースレイダーさん

 政権は「成長戦略」を掲げています。でも、今の日本はどう頑張っても、少子化は決定し、人口減は避けられず、高齢者は増えていく。成長ではなく「成熟」が求められていると思います。それが社会を豊かにする。



日本の将来をどうするか、ラッパーに聞いてもしょうがない気がしますが、安倍政権の「成長戦略」とは、経済成長するための戦略と言う意味です。

成長より成熟と言っている時点で、まるで理解していないのがすぐわかります。「社会の成熟度」と「経済成長率」は関係ありません。未成熟、発展途上な社会だから経済成長すると言うわけでもありません。

経済成長とはGDPが増えることです。一般にはインフレ率を補正した実質成長のことですが、名目成長を意味する場合もあります。国家経済と言うか、マクロ経済について語る場合に、「GDP」を理解していないと話になりません。

GDP(国内総生産)とは、日本国内で1年間に得られた所得の合計のことです。またそれは1年間に使われたお金の合計でもあります。ストックとフローで言えばフローのことです。

かなり単純化して言えば(ちょっと不正確ですが)、GDPとは

国内で1年間に生み出された商品やサービス(労働も含む)などの付加価値
=国内で1年間に使われたお金
=国内で1年間に得られた所得

と言う意味です。だからみんながお金を使いさえすればGDPはふえます。社会が成熟すると確かに生活して行く上でどうしても必用となるサービスや商品などが満たされてきてそれほどふえませんから、高度成長はもちろん無理ですが、それ以外の商品やサービスについては、みんながそれを買えば経済成長は可能です。教育・福祉・医療・安全・文化面などにはまだまだ需要があるはずです。

ちなみに、日本はこの20年間ほぼ経済成長していません。これは名目成長率がほぼゼロと言う意味ですが、その理由はデフレだからです。実質成長はちょぼちょぼとしていても、インフレ率がマイナス1%程度だったりしたために、名目GDPはずっと500兆円程度で成長なしでした。

170215japangdp.jpg

デフレだと物価が下がる=お金の価値が上がるので、拝金主義になってお金を大事にするからお金を持っているのに使わなくなり経済成長しません。金持ちは金融部門(ストック)に金を移動させるので、格差拡大と金融経済の肥大も経済成長を阻害します。

さらに、デフレと消費増税で可処分所得が低迷しているので、みんなが節約志向になっていることも経済成長の阻害要因です。日本の場合は需要が減っていることが経済成長できない原因なのです。

20年間も経済成長していない国と言うのは、かなり稀です。日本の他には、何と、「アフリカ地域」だけです。他の国は、途上国の先進国もみんなどこも普通に経済成長しています。高成長の国はたしかに少ないですが、まったく成長していない国のほうがはるかに珍しいのです。

これでおわかりかと思いますが、経済成長に関するもうひとつの大きな誤解、「人口が増えないから経済成長しない」と言うのも間違いです。

人口増加率と経済成長率には何の相関もありません。アフリカ地域では人口が2倍に増えても経済成長していません。

アジアが経済成長しているのは、日本が経済成長していないおかげと言うと変ですが、グローバル化で日本企業がアジア進出して国内が空洞化したせいも多いです。アジアの成長は、人口増加のおかげではなく、グローバル化によって資本が先進国から発展途上国へ流れたおかげです。

日本の経済的な停滞、GDPが成長しなくなったのは、人口が減る以前からはじまっています。デフレになってからです。消費税を5%に上げてからと同時に成長が停止したのです。バブル崩壊からではありません。

ちなみに日本の高度成長期の人口増加率はたかだか1%程度でしたが、経済成長率(実質)は10%近かったわけです。

まあ、マクロな話に個別の例を出してもあまり意味はないのですが、参考までに他の例をいくつか見てみますと・・・

ごく最近のデータは知りませんが、ちょっと前までドイツは移民を入れても人口減少だったらしいですが、普通にずっと経済成長しています。

最近は調子が悪い中国ですが、ちょっと前までは高度成長していました。一人っ子政策で人口増加を抑止していたのにです。逆に、毛沢東時代の中国のほうがはるかに人口増加率が高かったですが、ほとんど経済成長はしていませんでした。

中国が経済成長している(いた)のは、グローバル化のおかげです。そのぶん先進国は雇用や産業を奪われているのです。ユニクロ製品を安く買えるかわりに若者は派遣ばかりになっているわけです。

「総人口の増加」による「需要の増加」は経済成長にほとんど影響しないのです。

なので、移民を入れても経済成長するとは限りません。大半が失業者になるだけなら経済成長などするはずがありません。

ここまでの結論

「社会の成熟度」や「人口減少」などは経済成長する・しないとは無関係。日本において経済成長の最大の阻害要因となっているのは政府の緊縮財政です。それは、国の借金がヤバイという国民全体の勘違いのせいでもありますが。

他には格差の拡大やグローバル化(資本移動と人の移動の自由)も先進国での経済成長の阻害要因になっています。グローバル企業は所得を増やしますが、国内の労働者の所得が減りますので。

経済成長率と人口増加率には相関がないことの根拠の一つが以下の世界167ヶ国のデータです。

170216seichou.jpg

経済成長率(実質)と人口増加率の相関係数 R=0.17、これはつまり「ほぼ相関なし」です。


さて、最初に引用した中日新聞のコラムについて、ラッパーよりもっとひどいのがこのコラムですが、もう説明不要でしょう。


◆平等に貧しくなろう 社会学者・東京大名誉教授 上野千鶴子さん

 日本は今、転機だと思います。最大の要因は人口構造の変化です。安倍(晋三)さんは人口一億人規模の維持、希望出生率一・八の実現を言いますが、社会学的にみるとあらゆるエビデンス(証拠)がそれは不可能と告げています。

 人口を維持する方法は二つあります。一つは自然増で、もう一つは社会増。自然増はもう見込めません。泣いてもわめいても子どもは増えません。人口を維持するには社会増しかない、つまり移民の受け入れです。

 日本はこの先どうするのか。移民を入れて活力ある社会をつくる一方、社会的不公正と抑圧と治安悪化に苦しむ国にするのか、難民を含めて外国人に門戸を閉ざし、このままゆっくり衰退していくのか。どちらかを選ぶ分岐点に立たされています。
 移民政策について言うと、私は客観的に無理、主観的にはやめた方がいいと思っています。

客観的には、日本は労働開国にかじを切ろうとしたさなかに世界的な排外主義の波にぶつかってしまった。大量の移民の受け入れなど不可能です。

 主観的な観測としては、移民は日本にとってツケが大き過ぎる。トランプ米大統領は「アメリカ・ファースト」と言いましたが、日本は「ニッポン・オンリー」の国。単一民族神話が信じられてきた。日本人は多文化共生に耐えられないでしょう。

 だとしたら、日本は人口減少と衰退を引き受けるべきです。平和に衰退していく社会のモデルになればいい。一億人維持とか、国内総生産(GDP)六百兆円とかの妄想は捨てて、現実に向き合う。ただ、上り坂より下り坂は難しい。どう犠牲者を出さずに軟着陸するか。日本の場合、みんな平等に、緩やかに貧しくなっていけばいい。国民負担率を増やし、再分配機能を強化する。つまり社会民主主義的な方向です。ところが、日本には本当の社会民主政党がない。

 日本の希望はNPOなどの「協」セクターにあると思っています。NPOはさまざまな分野で問題解決の事業モデルをつくってきました。私は「制度を動かすのは人」が持論ですが、人材が育ってきています。

 「国のかたち」を問う憲法改正論議についても、私はあまり心配していない。国会前のデモを通じて立憲主義の理解が広がりました。日本の市民社会はそれだけの厚みを持ってきています。
 (聞き手・大森雅弥)



前半の、日本社会の維持に移民を入れることが不要なのは正しいですが、その理由も間違っています。

今は確かに人手不足になりかけてきていますが、まず、景気が上向いてきた時には人手不足になるのがむしろ当たり前です。長いこと人が余っていたこれまでが異常だっただけのです。ようやくあたりまえになりかけてきているのに、そこに移民を入れては国民がまた貧しくなる方向へ逆戻りです。

企業の労働力不足は、もうすでにはじまっているAIやドローン技術などの技術革新でおぎなうべきです。今後はほとんどの仕事が自動化・機械化されて、人は不要になって行きます。少子化はラッキーなのです。これから、労働力がいらない世の中になってくるのに人口が増えてしまっては、将来の若い世代は失業者だらけになってしまいます。

日本の若い世代も派遣ばかりで気の毒と思いますが、ヨーロッパの多くの国では若者の失業率がものすごい高いです。それほど高く無いのは、他国から搾取しまくっているドイツくらいのものです。

数年前のデータですが、25歳以下の若年層の失業率では日本が約6%に対して、ユーロ圏内では24%、圏内で最も高い数値を記録したのはスペイン(53.8%)で、次いでギリシャ(53.1%/*2014年5月時点)、イタリア(42.9%)、クロアチア(41.5%/*2014年第2四半期時点)。最も低い数値を記録したのはドイツ(7.8%)で、次いでオーストリア(9.3%)、オランダ(10.4%)となっている。”

ヨーロッパでの若年層失業率が高い理由はいろいろありますが、日本と共通しているのは、比較的雇用にたいしての規制があるおかげで、企業は簡単に社員を首にできないので、ある程度上の世代の雇用は守られているものの、そのぶん景気が悪いと新規採用をしなくなるので、ツケが若者に向かってしまうとのことです。

ここで新自由主義者ならば世代間対立をあおって解雇規制を緩和しろと言うでしょうが、それをやれば、若者の失業率は多少下がるかもしれませんが、そのぶん上の世代がどっと失業するわけですから、根本的な解決にはなりません。かえって悪くなるかもしれません。親が失業するのと、子供が就職できないのと、どっちが家計に与えるインパクトが大きいか考えればわかると思いますが、世代間対立をあおられてルサンチマンを駆り立てられると、それがわからなくなるから怖いですね。

若年層の失業率が高いことにたいして、解雇規制の緩和は何の解決策にもならない若者への人気取りルサンチマン政治なのです。

ヨーロッパで若者の失業率が高いのは、同じく安い労働力としてライバル関係にある移民の流入によるところも大きいのです。なので、移民流入の制限は一つの解決策になると思います。

もうひとつの解決策は、政府の経済政策(金融緩和+財政出動)による景気回復だと思いますが、ユーロは共通通貨ですから各国独自の金融政策ができませんし、財政出動もユーロを牛耳っているドイツやブリュッセルの官僚たちが許さないからできません。

EUは共通通貨と人の移動の自由、単一市場など、ある種のグローバルな理念を実現している共同体ですが、そのせいで国民が貧しくなっているわけです。少なくとも貿易の自由度で言えば、ユーロ内は最高ですが、逆に貧困化がすすんでいるのですから、自由貿易が何の解決にもならないのは明らかです。

安倍首相の成長戦略(規制緩和と自由貿易拡大による輸出依存)が間違っているのはその通りでも、左派が言う「経済成長しなくてよい」は大間違い、はっきり言って方向性じたいが間違っているので救いようがありません

安倍首相の経済成長を目指すと言う方向性は間違っていません。経済成長、つまりGDPの拡大以外に国の財政の問題を解決する方法はありません。税収の財源はGDPなのですから。

経済成長しなくて良い、GDPなど減ったって良いと言う方は、国民の所得が減って良いと言っているわけですから、それならばまず自分の財産をすべて国庫に納付してみてはどうでしょうか!?そこまでするなら話を聞いてあげても良いです。

しかも、これを言っている上野氏は団塊の世代なんですよねー。自分たちはさんざん豊かな社会で豊かさの恩恵にあずかって生きてきながら、これからの世代には貧しい世の中を引き渡そうとしていて、それで良いと思っている、高齢者エゴです。

上の世代は次の世代になるべく豊かな社会を受け渡す責任があると思うのですが。

だから私は財政出動を主張しています。国の借金は将来世代へのツケではなく、逆に今の段階で何もしないこと、緊縮財政によって日本社会を貧困化させることこそ次の世代にツケをまわすことになります。

将来世代が生きて行く上で必用なインフラを整備し、現役世代に所得の増加して行く正常な世の中(=経済成長)を残し引き渡して行くためのデフレ脱却であり経済成長なわけです。経済成長すれば「国の借金」は自動的に減って行きます。そのためには金融緩和と財政出動をしてデフレ脱却は正しい政策です。それがちゃんとされていないことが問題なのです。

これもすべて経済成長と言う言葉への誤解があるせいかなあと思います。